学生から社会人となり設計実務経験0の状態で働き始める際、どういった手順・流れで仕事を進めていけばいいのかわからない方が多いのではないでしょうか?
仕事の全体像が見えないとスケジュール管理が難しかったり、モチベーションにも大きくかかわると思います。今回は仕事の流れの全体像についてまとめてみました。あくまで私が学んだ手順ですので1例にすぎませんが参考にして頂ければと思います。
詳しい個別の内容が必要な項目は別記事にて解説できればと思いますので、概要として見て頂ければ幸いです。
では早速設計実務フローを見ていきましょう。
仕事の流れ①《コンタクト・契約》
まずは設計に入る前仕事の依頼が来てから契約までの流れを確認していきましょう。
1.メールコンタクト
初めに依頼が来た際、下記の項目を確認しましょう。
・個⼈or法⼈
・期間
・⽤途
・規模
・予算
2.対⾯コンタクト
メールでの条件に可能性がある場合、対面のコンタクトを取ります。
ポートフォリオで自社の紹介やご要望アンケートでお施主様や要望・人柄等を伺います。
3.現地調査
購入した(購入予定)土地を見せてもらいましょう。
この際下記の調査も一緒に確認しておきます。
・地形
・周辺環境
・インフラの場所
・危険な箇所
敷地の測量データの有無も確認しておきましょう。
4.協⼒会社に依頼
ここまでくるとお施主様にざっくりとした設計費も含んだ工事全体費の見積もりの準備に入ります。
構造・設備・照明・ランドスケープなど協力会社のスケジュールと概算見積もりを確認します。
5.設計スケジュール・見積書作成・確認
協力会社の概算と簡易調査による必要調査費なども考慮してスケジュール・見積書の作成を行います。
・簡易調査:建蔽・容積・⽤途地域・防⽕地域等の概要
・スケジュール:請求予定⽇記⼊
・設計⾒積:告⽰98条と事務所⼈⼯計算 坪単価で確認
・総額算定表:家具、地盤調査費、申請費などいろいろ雑費を概算計上
6.契約・重要事項説明
設計見積の承認を得たら、契約に進みます。契約の際に建築免許を提示し重要事項説明も行います。
・契約書:2部作製し、収入印紙を貼り、押印を済ませ、設計者・お施主さん双方が1部ずつ持っておく。
・重要事項説明書:対⾯にて、建築⼠が説明。
7.契約・請求書(着⼿⾦)請求書作成
契約が済んだ場合。分割した設計料の1回目=着手金の請求書を郵送する。
仕事の流れ②《調査・設計》
契約が済んだらいよいよ設計のフェーズに入ります。
8.敷地・レファレンス調査
まず初めに敷地の条件・参考事例(レファレンス)の調査を行います。
測量データがない場合このタイミングで測量・レベル測量を測量会社に依頼します。
9.役所・関係法令調査
市区町村のHPより敷地の用途・関係法令を調べます。現地調査表に記⼊していくと一通りは確認できるでしょう。
またウェブのみでは不明な箇所も多いので、役所・消防署に直接伺うことで確実に確認します。
10.基本構想《CONCEPT DESIGN》
調査した前提条件を基にお施主の条件希望が成り立つ案を提案します。
お施主様の希望条件を整理した表を作成することをおすすめします。
基本構想の段階でどの程度まで、考えるのかは人それぞれですが、
大きくシングルプランと簡単なモデリング(模型)の作成を目安にするといいと思います。
基本構想後、建築の配置がおおよそ決まった段階で構造家の相談、地盤調査を依頼します。
11.基本設計《SCHEMATIC DESIGN》
基本構想で決まったものを図面に起こしていきます。
・概要表・地積測量図・算定表
・特記仕様書
・仕上げ表
・配置図
・平面図・立面図・断面図
・内部展開図
・建具表
・設備図
・機器リスト
詳しい設計図書の内容は下記の記事を参照ください。
12.施工会社に概算⾒積の依頼
これは会社によりますが、基本設計が終わった段階で施⼯会社に概算見積もりを依頼します。
もしくは自社で積算ポケット手帳を参照して計算します。
13.VE①回目《VALUE ENGINEERING》
VEとはVALUE ENGINEERINGの略称で、適切な金額へ調整することを指します。
多くの場合概算見積もりが予算オーバーするため、面積を小さくするなど減額案を考え、計画変更していきます。
14.実施設計《DESIGN DEVELOPMENT》
VEで大きく金額のズレを修正した後は、詳細図を作成していきます。
それぞれ細かい収まりから、造作部の作り方まで検討していくフェーズです。
15. 施工会社に本⾒積の依頼
実施設計がおわったら、施工会社に本見積の依頼を行います。
図面の精度が低くなると、吹かして高めの金額で出てきてしまいます。
16.VE②回目《VALUE ENGINEERING》
本見積は工事契約のための最終金額になりますので、お施主様の納得いく金額までVE調整します。
仕上げや機器のグレードを下げたり、建具を規制寸法に変更したりして金額を押さえます。
仕事の流れ③《確認申請・工事契約》
設計がひと段落してきたら、確認申請を行い、工事契約を結んでいきます。
17.確認申請
14.実施設計が終わった段階で確認申請を進めていきます。
確認申請とは、
詳しい内容は別記事にて解説します。
18.工事契約
VEにて金額調整がフィックスしたら、工事契約を行います。
工事契約はお施主様と施工会社の間で結ばれますが、その際設計者も立ち合います。
仕事の流れ④《現場監理》
いよいよ現場が始まります。基本的には設計図の通りに施工していきますが、細かい色やディテールの収まり、
予定した図面通りの施工ができないといった予想外のことまで、現場では多く起こります。
それらを即座に対応するのは知識・経験が必要になりますので、一緒に勉強していきましょう。
やらなければならない現場でのことはこのような流れです。
19.着工・地鎮祭・上棟式
着工に先立ち施工会社と施工打ち合わせをします。
着工の際、地鎮祭を行う場合もあります。
20. 配筋検査・上棟式
基礎の配筋
また上棟式も行う場合もあります。
21 中間検査・完了検査・施主検査①
検査は規模・用途によって回数が異なりますが、配筋検査・中間検査・完了検査など行います。
下記の項目などチェックしていきます。
施主検査は完了検査時に一緒に行い、お施主様に細かい仕上がりを確認してもらいます。
22.是正工事
是正工事とは、完了検査で発見された問題に対して行う、やり直しの工事になります。
完了検査・施主検査でやり直しがないように、日ごろから現場を確認しておきましょう。
23施主検査②・引き渡し=竣工
最後に是正工事個所をお施主様に確認していただき、問題がなければ引き渡し=竣工となります。
仕事の流れ⑤《⼯事完了後》
設計は竣工して完成ではありません。今後問題が発生した時のために設計図書をまとめたり、
1年検査など様子を伺って、長く付き合っていきます。
24.写真撮影
写真家さんに頼んで、竣工写真を撮影していきます。
25.オープンハウス
告知をしてオープンハウスを開きます。
26.設計図書のまとめ
施工会社に竣工図の作成してもらい、設計図書をまとめて管理します。
27.プレスリリース・賞
プレスリリースにて完成した建築を各メディアに発信していきます。
プレスリリースとは、写真・データシート・図面などを記載した公文書になります。
また場合によっては賞への応募なども行います。
28.定期検査・一年検査
お施主様への挨拶もかねて、竣工直後は異常がないか確認していきましょう。
また1年たった段階で検査行くなど、定期的に確認することでよい状態を保っていくことができます。
最後に建築設計の実務は設計している時間より、様々な関係者さんとのやり取りしている時間の方が多く、コミュニケーションは最低条件です。そのためにも対等な関係が築けるように知識を蓄えて一人前の設計者になっていきましょう。